迎撃の準備は万端なんだよバカ野郎。~海か陸のハロンか。痛快な北部ベトナム走行記~
テンション低めで出航でーす。
ユーラシア<チャリ旅>編 前回
ハノイから南下する本格的なベトナム縦断のスタートを切った僕。いや、いきなり南ではなく、東へ寄り道して行きましょう。
雨が多くなり始める北部の5月。今にも水がこぼれ落ちそうな空を、そこは超晴れ男、力づくで抑えます。
路面は綺麗で、幹線道路はハイウェイみたいになっていて広くて走りやすい。いちいち派手な料金所の装飾が、やはり中国の影響を多大に受けているからなのかソックリ。
わざわざ遠回りしたのはコチラ、ベトナムの観光地の代名詞とも言えるベタ中のベタなハロン(Hạ Long)湾を見に行くため。
エメラルドグリーンの海と荘厳な岩山のコントラストが美しく世界遺産にも指定され、北部ベトナムの随一の見どころとなっています。が、それゆえに溢れる観光客、それに見事なまでの曇天で僕のテンションは1ミリも上がらず。
現地でクルージングツアーを利用するのですが、その際に立ち寄ることになる鍾乳洞。人工的なライトアップが満載で遊園地みたいにしちゃう感じがまたやっぱ、中国とソックリ。
ツアーの出発時に見た、船頭で大いなる海にビール腹をさらしているオッサンの光景が一番印象に残っている始末。
それでも楽しめた。てのがハロンの感想です。
それはどういう事かと言うと、ハロン湾へは、ハノイからの日帰りツアーでやって来る観光客が大多数。つまり、ここに滞在する人ってチャリ旅とか自力で移動してる人くらい。
てことは、ハロンの「町」を散策する人は少ない。誰も行かないところやガイドブックに載らない場所に異常に惹かれてしまうヘソ曲がりな僕は、ここがとてもワクワクしちゃったんですよ。
交通量の少ない静かなシーサイドロードを爽快に風を切って。
静寂が漂う閑散とした公園からは、クルージングで見た景色がソックリそのまま広がっていた。
海からではなく陸から見るハロン湾は、ツアーを利用して見た時よりも美しく見えるのはきっと、心の問題だろう。静かで、ダタだし。見る分にはよりローカルな景色で、こっちの方が面白い。
立派な橋の下は夕刻になるとカップルの談話スペースとなるようです。みんな等間隔で距離をあけてて、鳥かよって突っ込んじゃった。
橋からは微妙だけど、今度は上から見るハロン。風が気持ちいい。
ちなみにこの橋は我らがニッポンの援助により建てられたようです。
市場では新鮮なお魚を買い上げようと、威勢の良い声が響いています。
まったく期待していなかったベトナムが誇る世界遺産は、違うアングルから覆されたのでありました。一泊でもしてみてはいかがでしょうか。
ベトナムは宿の過密度と数が東南アジアではたぶん断トツ。乱立してるレベル。ここ一体すべてホテル。
ちなみに右の看板のコム(cơm)というのは、お米やごはんの意味で、つまり食堂。
ごはん盛り盛りで野菜たっぷりで、体が資本のチャリ旅と大食いの僕には嬉しい限り。それでもこれ一食じゃ足りないんですけどね。
コムにビンザン(bình dân)が付くと、大衆食堂ってな感じの意味合いになり、このように様々なメニューの中から指差しで注文することができます。もう見るからに美味しそうでしょ?
オカズによって値段が定められていて、店員さんの目視で料金が決まります。大体は300円以下で頂ける。
それにしてもバリエーションに富んだ具材ですよね。アフリカさんや南米さん中米さんはこれ、見習うことは不可能なの?フライドチキンにフライドポテトにフライドチキンって、勘弁してくださいよ、なんでも油で揚げてりゃいいと思ってたら大間違いやぞ。
さて、町の発展ぶりに経済成長の著しいこの国を垣間見ながら元気にペダルを漕いでいきます。
気付いたら荷台が両方とも折れててパッコーーンってなってた。
でもとりあえずは載っけてる分には問題無さそうなんで、修理は別にいっか。出発!
バカなんですかねバカなんでしょう。
その後に半べそをかくこととなるのは、先に読者の皆様にお伝えしておきますね。
ハロンから2日かけて辿り着いたのはニンビン(Ninh Bình)という町。
ハロン湾のそれと同じくゴツゴツした雄大な岩山がそびえ立ち、ここはその山の隙間をぬうように静かに川が流れる。ニンビンは近郊にあるこのような風光明媚な奇岩群の観光拠点となる町。
大まかにチャンアン(Tràng An) とタムコック(Tam Coc)というエリアに分れ、そこでは綺麗な湿原も点在し、ハロン湾と同じく世界遺産に指定されている。こちらもハノイから日帰りでも訪れることができ、陸のハロンと呼ばれています。
大抵の観光客はチャンアン側で、ゆっくりと壮大な岩をダイナミックに間近で見る手漕ぎボートに乗って景色を楽しみます。しかしこれ、「もっと金出すまで陸に帰してあげない」ってな具合で、ぼったくり被害に遭う観光客が多いようです。
ボートも良いけど、やっぱ移動の自由が効くチャリで好きな時に止まって、自分のペースで見て回るのも爽快。
のどかな現地の人の暮らしをほのぼのと見届ける。
ボートが密集しているこぢんまりした場所がタムコック。
こっちの方が観光客が断然少なく、現地人の和気あいあいとした穏やかな空気に包まれてます。
優雅に川を下り、レンタル自転車があるのかは分からないけど、自由に岩に間近に接近できて散策の楽しさがある陸のハロン。
シーズンと天気次第では超絶景を拝める、らしいけど、町の散策のほうが楽しい海のハロン。
どちらも甲乙つけがたい世界遺産。でも僕はこっちの陸派かな。
さてガンガン南へ参ります。
一日中ひたすらペダルを漕いでいるチャリ旅。その移動中って、暇じゃない?なんてよく聞かれるんですけど、ほんっと暇ですよ。
いやいや、ベトナムは道中でもなかなか楽しませてくれます。
こちらは東南アジアではおなじみ、道路脇のパイナップル店。ズラーっと、並んでてね、みーんなパイナップル。ここでスイカを売って一人勝ちしようって人はいないんですかね。
こちらはよく分かんないんですけど、香水?の販売ですかね。
「オッちょうど切らしてたんだよね、ラッキー。」そんな奴いる?
これなんてもっと凄いですよ、急に道路脇で鳥売ってんの。ペット用ですよ。
「マジか、ちょうど良かった、ジュウシマツ飼いたかったんだよね。」そんな奴いる?
ベトナム人って鳥が好きなんですかね、これは移動販売です。
やたら道路脇で生き物を売ってんですけど、これきっとノリで買っちゃう人もいるんでしょうね。最後までしっかり大切にお世話してくれることを切に願います。
これは町でもなんでも無い場所の道路沿いにあった安宿。部屋からの景色はもちろん道路。
こういう辺ぴなところにある宿って、なぜか泊まってみたくなるんですよ。それがチャリ旅では容易に叶いますよね。
一泊500円で、しかもバスタブ付きだよ!なんて絶対ウソだと思ったけど、
ガチだった。しかも、まさかのぬるめだけどお湯が出た。
東南アジアの安宿のシャワーなんてほぼ水なんですよ、まぁ暑いから関係無いけど、たまにはね。こんなよく分かんない場所にある宿が500円でお湯に浸かれるだなんて、これだからチャリ旅って最高なんですよ。
でも、バスタブ側のお湯の出る量がチビチビ過ぎて、溜まってから入る頃には水になっているという幻のお風呂でした。世の中そんなに甘くないんです。
食事はいつも安い大衆食堂か、と思われるかもしれませんが、いやいや、むしろ自炊回数のほうが僕は多いのです。美味しいベトナム料理だけど、でもね、やっぱ他の料理も食べたくなりますよね。
そんな時こそ、自炊ですよ。無けりゃ作ればいい。これ僕のモットーです。こちらはスーパーで一目惚れした生イカと生タコセット。約150円。
これが私の手にかかれば?
イカタコ飯でございます。醤油コンソメスープ付きで召し上がれ。
ボケをブチ込んでくるかと思いきやガチなのが出て来てビックリしました?
こんなのもどうでしょう。
市場で豚のかたまりに惚れ込んでしまいまして、普通にお米と一緒に食べようと思ってたら目に飛び込んできたのはフォーの乾麺。このボリュームでひと束で約40円とか。トータルコストは150円ほど。
チョロンっと置かれているニンニクと唐辛子は市場のオバちゃんの笑顔のサービスです。
フォー × 豚のかたまり=ブンコースタイルはこうなる。
ベトナム人も未知の世界、豚の角煮インパクト・フォーでございます。
小汚い安宿でコトコトと豚のかたまりを小一時間煮込むのもまた、乙なんですよ。
これマジでベトナムで開業しようか5分くらい考えちゃった。美味すぎておかわりおかわりであの量の乾麺を一度で胃袋にご案内しちゃいましたよ。
それにしても、この唐辛子ってカラいのかなぁ、という神がかった好奇心で先端部分をかじってみたんですけど、しばらく悶絶しちゃった。カラいに決まってんだろってね。神もビックリの天然さかよ。
角煮の味付けはシンプルに醤油と砂糖だけですが、ベトナムで買った富士山が描かれたこの醤油、魚醤の風味がありまして、これがシンプルながらの美味さの決め手だったんです。先のイカタコ飯もこれ。角煮に魚醤、これ日本で流行るんちゃう?真似していいですよ。
いや〜しかし参っちゃったなこれ。また女性読者様が増えちゃうでしょこれ。スーパー馬鹿だけどチャリダーな料理人ってね。美人なお姉さんが黙ってないでしょこれ、ちょっと天然だし。年上のお姉さんDM待ってますから。
もうこのネタしつこいですか?すいません。
ネタじゃないんですけどね実際。
最南端を目指してドンドン進んで行きます。ハノイとホーチミンを結んだ列車で縦断旅ってのも風情がありそうですね。
さて、ここいらで再びラオスへ脱出しなければなりません。
ベトナムの初めの入国では取得していたビザを使わずに、ノービザの状態で入ったのでその期限の15日間で一度、第三国へ抜けなきゃいけない。その後に再度、今度はビザを使用して入国するという流れ。
ラオスに一番近い国境と思われるナンパオ(Nam Phao)へ、西へ舵を切る。
幹線道路から逸れると一気にローカルな道に。
こりゃすげぇ。回りには何も無いどころか、飼い主すら見当たらないんだけど、放し飼いなのか脱走したのか。一羽くらい拉致して旅の仲間にして、旅が終わる頃にはニワトリになってるってのも乙なネタですよね。でもこれよく見たらアヒルだわ。いらねっ。
国境は山を境にしており、つまり峠なんでソンパオ(Sơn Phố)という町からバスを利用。
ベトナムはローカルバスの外人に対してのボッタクリ被害をよく聞くので、事前に宿のスタッフに相場を聞き出しておきました。
「とい らー ぐい ラオ」
そしたら案の定、100,000ドン(約500円)前後で行けると分かったが、ドライバーはその3倍の「300,000ドンだ!」とドヤ顔。
マジに想定内すぎて吹いちゃった。これほどとはね。
チャリも積んでるってことで2人分の運賃と考えて、せめて200,000ドンでしょ。いや、そんなに出したくねぇ、120,000で勝負だ。俺を誰だと思ってる?こういう場合に備えて迎撃の準備は万端なんだよバカ野郎。
「トイ ラー グイ ラオぉ!アイム ラオぉ!ノーマネー!」
(私はラオス人です)
日本人なんてもちろん、中国人でも韓国人でも、あるいはタイ人に見えたら、いくらかは金を持ってる外人と思われるじゃないですか。そこをね、ゴネてゴネて、それでもダメなら「俺はラオス人だからお金無いんだよ。」って言ってみる作戦。
日本人とラオス人って顔が結構似てるんですよ、しかも僕の顔は日焼けで真っ黒。おまけにゴミのようなチャリが更に貧乏人に仕立て上げ、祖国に帰るラオス人にしか見えない作戦。
言われた金額の半分以下を、悲壮感満載の表情で手渡した。
ドライバー:「・・・・・」
「うん。」
ホントに信じちゃったお前。
なんか国籍偽った俺のほうが罪悪感感じちゃったお前。
それにしても、明らかなボッタクリ運賃を請求されている僕を、他の乗客は見て見ぬフリなんだなぁ。悲しいけれど、僕を助けようとしてドライバーに文句言っちゃうとこの先ギクシャクしちゃうのかもしれないし、現地人は現地人同士の暗黙の了解的な何かがあるんでしょうね。
大丈夫、この程度でベトナム人を嫌いになんてならないよ。
バスというか小型のバンはあっという間に満員。トランクにはたくさんの食料。てことは、ベトナムで買い出しして祖国に帰る、みんなラオス人ってこと?しかし聞こえてくる会話はベトナム語である。
これもしも彼らが皆ラオス人だったら、「俺はラオス人だから金ねぇんだよ」作戦に申し訳無さと多大なる失礼さを感じずにはいられない。。すいませんでした。
しっかし前に座るオヤジの声がデケェことデケェこと。しかも後ろを振り返って喋る際に、ツバがガトリングガンのごとく放たれるし。しかもこのツバくっせぇ。服が溶けそう。酸かよ。マジで黙ってほしい。
そう感じていたのは僕だけは無いようで、彼の背中に背番号のような紙を貼るイタズラで報復した方がいたようです。あるいはこれ、クリーニングか何かに出した際に貼られてたやつじゃないの?とりあえずダッセェ、ざまぁみろ。
国境です。あの向こうのラオスへ一度入国。即行で出国し再びベトナムへ。しかしながらそう簡単にはいきません。これもある程度は想定内。
ビザランに厳しいベトナム。初めはノービザで、その後すぐに所持していたビザで再入国という、ビザランでは無いもののそういった手法や例はこの国境では稀なのか、イミグレ職員全員が僕のパスポートに見入っている。挙句には一度、英語を話さない職員が僕に、両手の人差し指を交差して見せる始末。
入国拒否かと失望しかけたが、1時間に及んだイミグレたちによる議論で僕の再入国は認められたのでありました。
ふぅ、危ないとこだったぜ。まだまだ俺のベトナム旅はこれからなんだ。行くぜっ。
バチョーーーーン!!!!!
・・・。
・・・・はちゃぁぁぁぁああッ!!!!!
次回
(この記事は2015年5月〜の旅の記録です)