【誰も行かない秘境<下巻>】アフリカ大陸最北端の世界
前回
(2016年12月〜)
さぁ本題へ参りましょう。アフリカの最北端はビゼルトから約20kmの道のり。公共交通機関で行く場合は、乗り合いバンが頻繁に通っていたので近くまではそれで行けるのかもしれません。あるいはタクシーでもそこまで高くないと思われる。
チャリでも距離的には余裕ですが、途中に若干、怪しげな貧困街っぽいとこを通らねばなりませんでした。電線に吊り下げられた靴が不気味な雰囲気を醸し出している。これは割と世界各国でチラホラ見掛けますが、麻薬などのクスリや売春、ギャングの縄張りなどのサインだとも言われています。
それも怖いっちゃ怖いけど、でもやっぱり恐怖なのは野良犬。チャリ旅と犬は切っても切れない苦い関係なんです。何度追い掛けられたか。
「最北端はコチラです」ってな看板が出現。ゾックゾクしますよね。
気持ちの良い景色とワインディングロードで標高も感情も上がってゆく。
この写真撮ってたら、羊飼いのオッサンに金を要求された。僕、アラビア語分かりません〜ッでなんとか免れたが。
ちょっとした峠を越えれば早速見えてきましたよ、あの左に見えるのがアフリカで一番北にある灯台でしょう。
最北端の「都市」はビゼルト、となればあれは最北端の町か、村でしょうか。のどかな風景が広がります。
幹線道路から逸れて未舗装地帯へ。しょっぱな深い水たまりが外客を退けているかのよう。
あの馬に乗った羊飼いさんはとっても笑顔でウェルカムでした。
メルヘンチックな並木道の奥から、かすかに聞こえる波の音、そして風が揺らす木の葉の音だけの空間。
そこを抜ければ地中海に大地がむき出しの荒涼とした景色が広がる。
早くも来ちゃったか、初のアフリカの国でいきなりの最果ての一つへ。
ただただ、「来るな」と言わんばかりの猛烈に強い風と、波の音だけ。自分以外に誰一人いない、孤高の世界。申し分無い果て感に鳥肌さえ立ってくる。
まだ新しいのか、黒光りするこれは先端のモニュメント、の一つ。
アフリカ大陸の北の果ての地、その名もアンジェラ岬(フランス語でCap Engela,英語だと:Cape Anjela)。
更には、そうですね、アフリカ縦断編の最終地点、アフリカ大陸の南の果て、アグラス岬の文字も刻印されています。双方の距離、つまりそれはこの大陸の縦の直径であるその距離は8,060km。ピンと来ないデカさ。
ちなみにアンジェラ岬は、ラスベンサッカ(Ras ben sakka)とも呼ばれるようで、ウィキペディアや地図ではこちらの呼び方のほうがメジャーなようです。
そしてもう一つ、日本語でアフリカの最北端のことを調べると、10年以上前の古い情報ばかりが出てきますが、それらのブログなどでたびたび「アフリカ最北端はブラン岬」と書かれている。
上の地図上でそれ(Cap Blanc)は右端にあるやつなんですが、間違いであることは明白。それはおそらく、まだ4年前に当たる2014年に最北端についての再調査が行われた?ようで、つまりつい最近まではブラン岬が最北端と言われていた、ということかもしれません。
もしかしたら、アンジェラ岬という名も再調査の際に付けられた名前なのかも。
そんな先端についての細かいことを話しても楽しいのは僕だけですかね。黒いモニュメントからほんの少し歩けば、ひっそりと姿を現します。
地中海の大海原をバックに、岸壁の上にポツンと立てられたそれは雲の隙間から顔を出す太陽の光できらめく。ここがある種のゴール地点かのような、そんなシチュエーションがまるでゲームの世界の主人公になったかのような気分。
これが大陸のもっとも北の、及び世界の果てを示すもの。
まだ2014年に作られたばかりの新品、だけどもう既に若干錆びついているけど大丈夫なのか。しかしこのモニュメント、他に類を見ないほどカッコイイですよ、チュニジア政府やりますなぁ。近々誰かがブラ下がってヘシ折れちゃいそうだけど。
(このまま真っ直ぐに進めば、イタリアなんだなぁ。それに関してのロマンは少ない場所である。)
RPGの世界にいるような感覚。でも、船でポーンと来てチョーイと到達!という言わば裏技を使ってクリアしたかのような、自分の中ではなんとなく邪道な気がしてスッキリはしない。というよりは、アフリカの一極を制したという達成感が当然ながら薄いのだ。
ビゼルトが少し名残惜しくもチュニスへ列車で帰還。約2時間の乗車でたったの5ディナール、200円。申し訳ない安さ。
自転車代も取られることなく、駅員も乗組員もホント親切で大好きですチュニジア。このまま情勢も治安も落ち着き、他の国からの観光客でも賑わうことを説に願うばかり。
アフリカの「ア」の字も知らない状態でこの大陸の先端の一つを制覇しちゃったけど、それは現在の近隣国の情勢上、仕方がない。海路も地球を這いつくばるという点では陸路と同じ。空路を極力使わずに世界の果てを制するという自分のポリシーにシッカリと従った結果である。
達成感は薄いとは言ったものの、心の底からゾックゾクワクワクしたこの感じはやっぱりクセになるものだ。いつの日か、エジプトかモロッコからの陸路でこの果てを制する者は、それが出来る日は、来るのでしょうか。
チュニジアに別れを告げ船で再度イタリアへ。ゆこう、次の果てへ。見た目はゴミのような、しかし頑強な相棒に跨り、ユーラシアの最果てを目指してペダルをひた漕いでゆく。
──────── 感慨に浸りながら空を真横に眺めていた。
(2017年11月12日)
引き続きモニターで現在地を追っていると、次はモロッコ以南のサハラ沙漠を経て、ちょうどセネガルはダカールの上空までも飛んでいるではないか。そこはアフリカの最西端の地である。その壮絶な戦いの話はまた、いつの日か。
さて、始まるぞ、南米の果てを制圧する旅が。