一泊が限界の宿?そして冒険へ。~チャリ東南アジア一周完結-下-~
前回-上巻-
ストイックな帰還からの、上級者向け?の宿
なにこれ、ゆで卵じゃないの?いやなんか違う。
いやだいぶ違う。腐ってる?
これアカンやつ?ひとくち・・・
うんまぁい。
この強烈なビジュアルの食べ物はラオスのソウルフード、ホビロンと呼ばれる孵化しかけのアヒルのゆで卵。
これが面白くて、ちゃんと玉子の味と、シッカリと鳥肉の濃厚な味の両方を味わえるんですよ。既に羽も生えていますが、まだ胎児だからか柔らかくて歯にも絡みません。塩茹で加減も抜群で栄養価もかなり高いし、一つ30円で見た目は最低だけどコスパは最高。
ホビロンは東南アジア各国や中国でも食べられますが、その食べ方や名前も各地で様々。火の通し加減やアヒルの発育段階でも味が変わるようですよ。興味ある方はググってみて下さい、これよりももっと生々しいヤバイやつもあります。
さぁさぁ、特に見どころの無いラオス第2の都市、パクセー(Pakxe)を経由し、遂に戻って参りましたタイランド。東南アジアの中でも屈指の経済成長を見せ付けるかのような、このモダン的なイミグレーション。
↑これはラオス側の国境。これでもかなり綺麗な路面の部類ではあります。
どうです?タイに入った瞬間のこの美し過ぎて眩しいアスファルト。ちなみにベトナム、カンボジア、ラオスの右通行から、タイは日本と同じ左通行に変わります。これ、始めは気持ち悪いんですよ、逆走しそうになっちゃう。
最東端の町、ウボンラーチャターニー(Ubon Ratchathani)からゴールのバンコクまでは約600km、休息を入れると早くても6日間の行程。
もう一息やったるぜッ!東南アジア一周の完結だ、引き続きストイックに行くぜッ!
なんて意気込むわけでもなく、最後の最後でサクッとペローーンと夜行列車を使って帰るというストイック完全崩壊のボーナスステージ。
どうにももう、満足しちゃった。ラオス北部の鬼のような山岳地帯での死亡事故、ビザの期限付きのタイムリミットに迫られたベトナム完走、カンボジアの悪路と現地人の柔らかな笑顔。これらを経験、乗り越えてしまうと、タイの美し過ぎるアスファルトがゆえに無難過ぎる走行に、物足りなさを感じられずにはいられない。
そしてたまには、鉄道の旅も楽しいですよ。どっかの駅に停車した途端に現れる車内販売。焼きたての炭火焼の串焼きチキンの売り子が夜中1時に乗り込んで来て、車内が香ばしい匂いに包まれるという深夜の珍事。こんな時間に誰が食うねんッとボヤいたそばから目の前のオッサンが購入しかぶり付き始めるという奇跡。
暗闇を切る列車の車窓からは、北斗七星がクッキリと見て取れた。そう言えば最後に夜空をまじまじと見つめたのはいつだっけ。たしかバンコクを出て、まだ東南アジア一周をスタートさせて間も無い、どっかの駅で野宿した時だ。基本的に夜は出歩かない以前に、チャリ旅だと疲れて即行で眠るから夜空とは無縁だった。大きな挑戦が始まったばかりのワクワクとちょっぴりの不安を抱えていたあの時も、北斗七星を見たなぁ。
なんだか星さんたちに、「おかえり。」って言われている気がした。
そしてウボンからぴったし12時間を経て無事に、バンコクへと帰還したのでありました。6日の行程がたったの半日ですよ?んんまぁ〜、文明ってサイコぉ〜♫
結局のところ、ラスト600kmが異常に面倒臭かったということです。
再びのバンコクでは、安宿が集まるカオサンロードからは外れて、ファランポーン駅近くのシャドウ・イン(Shadow Inn)という宿へ。
ここは個室で当時一泊100バーツ(約350円)という破格の値段。もちろんそれだけに、予約サイトの口コミの評価はすこぶる良くない。とある人の「一泊が限界」というカキコミに吹いちゃった。これが逆に好奇心をそそるカタチとなって実際に泊まってみた。
上の水道、水は出ます。
もちろん質素な室内。カキコミの通り、ベッドの真ん中が陥没しており猫背にはたまらないベッドとなっているのです。
トイレ兼シャワールームがボクシングの試合が出来そうなレベルの無駄な広さ。実際に水を浴びながらシャドーボクシングしちゃった。なるほどそうか、だからこの宿ってシャドーインって名前なんだな?
建物は熱がこもる構造で、タオルで身体を拭いているそばからまた、汗が出てくるという、もはやサウナルーム。試合を控えた減量中のボクサーにはたまらない宿ですよね。
ちなみにシャワールームの扉にはセーラームーンがスタンバイ。
おいおいおい、便器に穴空いちゃってお前、月に代わっておしおきよッなんて言ってる場合じゃないぞ。ゲリ気味の際は汚物がポタポタ落ちるぞこれ。
って感じで、上級者向けではあるでしょう。慣れた旅人であればWi-Fiも速いし、宿の人も悪くないし、楽勝ですよ。
バキ爆誕!からの新たなる冒険へ。
さて、チャリでの総走行距離はザックリと5,000kmくらい。東京から福岡が約1.000kmだから2往復半って感じ。ちょうど3ヶ月間に渡った東南アジア一周の冒険はこれにて終幕。
また少し、いや、だいぶ度胸が付いちゃったな。タイ国内の走行が無難で物足りないと思えちゃうくらい自分のチャリ旅のレベルが上がっちまった。
・・・あれ?物足りないってか面倒臭くなっちゃっただけ。
よ〜く分かったぜ、こんな舐め腐った装備でもやれるんだって事が。サイドバックもサスペンションもギアもペットボトルホルダーもいらない。必要なのは心、それだけ。
・・・あれ?その装備ぜんぶ欲しいんやけど。買い集めるのが面倒臭いのとお金使いたくないだけ。
・・・それらを圧倒的に凌駕できるくらいの、"バカの心"が必要ってことだ。血管がブチ破れそうなくらいキツイけどな。
なァ、俺らまだやれんだろ?やってやろうぜ。こんなお互いゴミみてぇな出で立ちでよォ、このまま売ってやろうぜ、地球に、喧嘩を。
あのときボートでチャリをまざまざと見て感慨にふけっていた時にはもう、心に決めていました。<ゴミカス同士、まだまだ行けるとこまで行ってやろうぜ>と。
そういえば、キミにはまだ名前を与えていなかったね、コッペパン号はどうかな。
いやいや、そんな甘くて柔らかくはないよねキミの身体は。
よし、(いまさら)今日から(突発的に)お前の名は(うっかり)、
刃牙-バキ-だ。
自慢の鋼のボディが「バキッ」と折れて走行不可になる最高のネタをお待ちしております。
よっしゃあ、やるぜ限界への挑戦ッ!!!
いや、ちょっと、休憩しよか。旅を、じゃなくて、チャリ旅を。
このとき6月の下旬。東南アジアのこの辺りでは、これから本格的な雨季のシーズンに入り、それが場所にもよりますが3ヶ月ほど続きます。チャリ旅と雨の相性の悪さは言うまでもありません。雨だらけになっていく時期が分かっていて無理やりチャリ旅を続行するのは、賢くない。というワケです。
てことで、雨季が終わる頃までここバンコクで美人なタイのお姉ちゃん捕まえて毎日ハッスルして過ごします。って違う違う。
それなら飛べばいい。夏の時期がベストシーズンとなる場所へ。
そうか、なるほど、よし来た、北欧だな。
やれるのかは定かではないが、ヨーロッパから、ここバンコクへ再び陸路で戻ってくる大冒険をしよう。
幸運にもその間の自転車はというと、プーケットで知り合ったタイ人の友達の、ご実家に置かせてもらうことが出来たのです。その友達はバンコクにはいないけれど、ご両親がとても親切で、訪問する際には毎回こんな家庭料理をご馳走になってしまった。
つくづく想う。旅とは人の優しさの上に成り立つものであると。
これまでの最高で最強の旅は、3分の1は自分の行動によるもの。3分の2は、出会ってくれた人、親切にしてくれた人たちによって創られています。
ってことでバキ君よ、しばしの間、休んでいてくれたまへ。次にここへいつ戻ってくるかは未定だが、あるいは色んな意味でもう二度と帰ってこない可能性も無きにしもあらずだが、待っていてくれ。久しぶりに見たキミは、ボディが錆び切っていて根元からバキッと折れていて破棄処分、というネタも大歓迎だぞ。って違う違う。
・・・てか、あれ?自転車に劇的な命名をしてからの、さっそく長期の休養に入らせる珍事。
始めよう、ヨーロッパからバンコクへの陸路の挑戦、つまりは、ユーラシア大陸横断の冒険を。
これまでのチャリ旅編はこちら。
(この記事は2015年6月〜の冒険記です)